スタッフコラム

大学院を卒業し映像制作会社へ新卒で入社したというと、どうしてそのような方向転換をと驚かれることも多いです。しかしながら、研究職とドキュメンタリー制作には多くの共通点があるのでは?というのが入社2年目時点で得た持論です。

研究のテーマを設定する際に求められる新規性、つまりテーマやアプローチや視点が目新しいものかどうかは、仕事でも常に問われます。
企画の相談をすれば「これ、何年か前に◯◯ディレクターがやっていたよ」「そういえば先週BS1で同じような番組が放送されていたな」と言われることもしばしばです。先行研究を参照し、常に同時代的な事象にアンテナを張っていなければならないのは同じ、いやむしろ、より顕著に新規性が求められるのがテレビのお仕事なのでしょう。いかに自分が勉強不足かを日々思い知らされています。

情報の裏取りのために、リサーチにも奔走します。しかも、そのリサーチ内容は国会図書館に通い詰め一次資料をしらみつぶしにあたるようなアカデミックなものから、SNSを駆使してネットの海から宝探ししなければならないアクロバティックなものまで、多岐にわたります。
「希少言語の翻訳者を探して」「演者の〇〇さんが気に入りそうなナイスな差し入れを考えて」「街の雑観に偶然映り込んだこのステッカーがやばい思想のものじゃないか調べて」・・・日々降りかかってくるのは、Google検索でもなかなか出てこないようなヘンテコで面白い調べ物の数々。
時にはなんの手がかりもなく途方に暮れてしまうほどの難題もありますが、やり遂げた時には心地よい達成感があります。とはいえ、歴戦の諸先輩方はそんな無理難題を経験と裏技で涼しげに乗り越えておられ、いつも圧倒されてしまうのでした。

そして何より、自分がどうしても問題だと思うこと、伝えなければと思うこと、好きなこと、知りたいことがあれば、それをとことんまで追求して形にできる。それが一番の共通点なのではないかと思います・・・とかなんとか御託を並べましたが、それを実現できるかどうかは自分次第。
AD2年目の今は、映像に関してなんの素養もないど素人から、ドキュメンタリー制作者になるべく修行中です。自分の不甲斐なさを思い知らされへこむことも多い日々ですが、理論や理屈を超えた先にある、目の前の現実で起こっていることを大事にできるよう、精進していきたいです。

新しい知識を得ることが好きで、調べ物が好きで、人の話を聞くのが好きで、さまざまな事象への関心や問題意識があって、それをなんらかの形で表現したい。そんな仕事がないか探していた就活時期に偶然見たドキュメンタリージャパンのHPで、ドキュメンタリー制作という選択肢に思い至りました。
もしも今同じような方がいれば、選択肢の一つとして参考になれば幸いです。