入社して1年ほど経った頃、旅先で地元の農家の方が運転する軽トラに乗せてもらったことがあります。
JR只見線という新潟県小出駅と福島県会津若松駅をつなぐ秘境路線に乗って一人旅をしていたのですが、温泉に入るために途中下車し、駅に戻ったところ次に電車が来るのは2時間以上後。
1日に数本しかない路線なのに何故こんな旅程にしたのだと過去の自分を責めながら、無人駅で長時間過ごせる訳もなく次の駅まで1時間半ほど景色でも見ながら歩くことにしました。
歩行者が滅多にいない山間の道を歩いて30分。
軽トラで偶然通りがかった地元の農家の方がこんな所を歩く人はいないと心配して、方向が同じだからと幾つか先の比較的栄えている駅まで乗せてくれました。
少し土の匂いのする車内。助手席に座らせてもらって周辺の観光スポットのこと、仕事のこと、家族のこと、その方に私と同じ歳の娘さんがいることなど色々と話が弾み、20分ほどで駅前に到着。
「また紅葉が綺麗な時にでもおいで。〇〇(地名)にきてバカな農家って尋ねたらうちが見つかるから。泊めてあげるよ!」
そう言って名前も連絡先も伝えることもなく農家さんは帰って行き、私は去ってゆく軽トラを見送りました。
果たして本当にその土地に行ってバカな農家を訪ねるだけで再会できるのでしょうか?そもそもバカな農家って一体どういうことなのでしょうか?
色々と疑問が残りますが、こんな風に土地を訪ねていけば名前を知らなくてもその個人に辿り着ける様な繋がりの深いコミュニティが存在すること、そんなところに住む人に偶然出会えた事がとても嬉しかったのでした。
ドキュメンタリージャパンに入社して今年で3年目。
元々かなり人見知りで非社交的だったため、入社前から一人旅をすることはありましたが、旅先で誰かと話が弾むなんてことは中々ありませんでした。
入社した当初はこんな自分がドキュメンタリーの制作なんてできるのだろうかと戦々恐々としていた程です。
仕事の中で多くの方と関わるうちに段々慣れ、最近では取材先の方と楽しく話を出来るくらいにはなってきました。
根本的に性格が変わった訳ではないので一人で取材なんてことになると勿論緊張するのですが…
それでも取材で人と話して面白いことを聞けた時は、そんな人と出会えたのも併せて喜びもひとしお。
仕事もプライベートも今後どんな出会いがあるか楽しみです。
自然に囲まれた只見線の無人駅